「…とまぁ、こんな流れだ」
「つまり、柊也は仁と央に脅されたわけだね」
「人聞きの悪い言い方するなよ」
事実だと思う。
まぁ、言い方はあれだったけど私ならなんとかしてくれそうと思ってくれているのは嬉しい。
が、これじゃ柊也に同情するよ。
「それで?静音は柊也にいて欲しいのか?」
「え…うーん……」
どうなんだろう。
柊也のおかげで助かったこともあるし、暇な時はなんやかんやで相手してくれるし…
でも、やっぱり柊也が辞めたいのに私が引き止める権限はない。
「いてくれて困ることはあまりない…けど……柊也が辞めたいのなら無理に止めようとは思わない」
「………ふーん。本当、素直じゃねぇな」
「何が?」
「さぁな。自分で気づけ。鏡でも見ろ」
「は…?」
仁の言いたいことがよくわからない。
「仁先輩っ!」
珍しくむっとした表情でやってきたゆいちゃん。
仁は時計を見ると、頭を掻いた。
「わりぃ。忘れてた」
「ずっと待ってたんですよ…」
「寂しかったのか?よしよし」
「違いますっ…!!」
仁に頭を撫でられ、顔を赤らめながら怒るゆいちゃん。
可愛い…。
「俺、仕事あるから。静音も依頼、頑張れよ」
「あー…うん」
「静音さんと話してたんですか?」
「あぁ……なんだ。嫉妬か?」
「違います!!サボって寝ていたと思っていたので、静音さんと話していたのなら許します」
ゆいちゃんは私にお辞儀をした。
「話を割って入ってしまったのならすみません」
「ううん。大丈夫だよ。私もごめんね?ゆいちゃん待ってたのに…」
「いえ。悪いのは仁先輩ですから」
「ゆいも言うようになったな…」
確かに。
仁にあれほど(入学当初)からかわれていたゆいちゃんも、今じゃ別人。
私もしっかりしたいい子のゆいちゃんみたいな後輩が欲しいなぁ…。
来年は新入部員が入るように頑張ろうかな。