私はまた消毒液を手に取り、柊也の腕にかけ、軽く拭いた。
「ってぇー…」
「このくらい我慢してよ」
「力強すぎなんだよ」
「優しくしてあげてるじゃない」
「どこが………」
柊也は呆れたようにそのまま黙り込む。
私も黙ったまま、治療をした。
たまに染みたのか、ピクッと手が動くのがなんだか可笑しい。
「…なぁ」
「え?ん、何?」
治療が終わり、片付けていると、柊也が私を見ながら話し掛けてきた。
「お前さ、なんであそこであの女に手ぇ貸したわけ?」
「それは……」
なんでだろう。
ただただ、人を助けるのは当たり前だと思ってやってきた。
だから…だと思う。
あの言葉を…あの人の事を…覚えてなかったら、これは当たり前ではなかったのだろうか。
他の人だったらどうした?
そのまま走った?
振り向いた?
声を掛けた?
心配した?
私と同じ行動をとった?
そんなこと分かるはずもない。
でも、あの人なら私と同じ行動をとったと思う。
いや、あの人のとるだろうという行動を私がとったんだ。
「…まぁ、手助けしなかったらお前らしくなかったな」
「え?」
「ぜってぇ俺呆れてた…と思う」
「それってどういう意味?」
「そのままの意味」
柊也は手を目の上に被せるとそっぽを向く。
私らしい…よく分からない。