良美の声を聞きたい…。

そう思ったが、店内には有線が大きめに流れていて、しゃべり声の小さい良美の声を聞き取ることが出来ない。

「良美と一緒にいる、あの女の子。良美の友達なのかな…」

独り言のように私は言った。

「そうみたいね…」

優太郎は、良美達を眺めながらそう呟いた。

優太郎は、私の対面の席、つまり良美達から正面の位置で座ってる。

優太郎は、昔を思い出してるのか、遠い目をして良美の方向をずっと見ている。

「優太郎…」

「え、何?」

「見すぎだって」

「大丈夫よ。一度も目が合ってないから」

優太郎がそう言った時、店員の女の子が元気よく声を出した。

「いらっしゃいませ」

私は、一瞬入口の方を見て、即座に顔の向きを変えた。

−努だ。

「あれ、さっき歌ってた人よね。リッピーが、良美の彼氏だと思うって言っていた人でしょ?」

「うん」

「あ、良美達の所に行った…って、ヤバッ!」

優太郎そう言って即座に顔の向きを変えた。

「え、どうしたの?」

「あの彼氏が、こっちの方ずっと見てる奴がおるなぁって呟いたから…」

私は驚いて優太郎を見た。

「え、優太郎、向こうの声聞こえるの!?」

努の呟きなんて、私には聞こえなかった。

「ええ、私、耳だけは異常にいいのよ」

−そう言えば、一緒にコンビニでバイトをしている時、優太郎はいつも客の悪口を聞き逃していなかった。

「じゃあさ、良美達が何て話してるか、私に教えてよ」

優太郎は頷いた。

「ええ、いいわよ」