−事故の原因は、バスの運転手の飲酒運転だった。

バスの運転手は、事故で即死。

仕事中に飲酒なんて殺してやりたいくらい憎いが、もうその相手はこの世にいない。

そんなやりきれない気持ちのまま、二年が経った。



あの日から、理沙の姿は見ていない。
気がついたら、理沙は学校をやめていた。

俺はあの日、理沙の父親を責めてしまったことを謝罪しようと思い、良美に理沙の家を教えてもらって、訪ねてみた。

ところが、理沙と家族はもう引っ越した後だったのだ。

理沙は、俺にも、あれだけ仲が良かった良美にも何も言わずに、どこかへ行ってしまった。




駅の片隅に着くと、俺はケースからギターを取り出した。

「あ、あいつ、前いた奴じゃん」

「あの人、結構うまいよ」

「あ、何か歌う気だ。聞いて行こーよ」

たちまちに野次馬が集まる。

今日は新曲を作って来た。
だけど、お前達に聞いて欲しいんじゃないんだ。
俺が聞いて欲しい人は一人だけ。

なぁ、下手だけど、聞いてくれよ。



俺は、空へ向かってギターを弾いた。




『空へ』第一章 -完-