勿論、真幸はあたしを家まで送ってくれた。


「何かごめんね。」


うっすらと、空全体に雲が掛かっていた。


決して雨が降りそうなわけではない。


なのに雨が降るんじゃないかと、あたしはわけも無く不安になった。


「妃奈が気にする事ないよ。
帰った方がいいって言い出したの俺だし。」


もう見る予定だった映画の始まる時刻は過ぎてしまっていた。


分かってる。


真幸が言ってる事は間違いじゃない。


確かにあたしも、みやびちゃんを置いて行く事に多少の躊躇いはあった。


だけど…


正直、やはり今日は真幸と一緒にいたかった。


約束したあの日からずっとずっと楽しみだったんだ。


気付けば真幸があたしの手を握っていた。


「妃奈、」


「何?」


「勘違いするなよ?
俺も今日妃奈に会えるのすげー楽しみだったんだからな?」


「…分かってるよ。」


「当たり前だけど、妃奈の事嫌いになったとかじゃないからな?」