あたしは全力で走った。


どう見たってこれからデートに向かう乙女には見えないだろう。


そんな事も気にせず走り抜いたあたしは、いつものように立っている大好きな人の姿を見付ける。


「真幸!」


「妃奈!
また全力疾走してきたの?」


「…うん。」


あたしはこくりと頷いた。


「別にいいのに。」


真幸はあたしの頭に触れた。


「走ってセットした髪が崩れたらどうするんだよ。」


「え…
ぐちゃぐちゃになっちゃった?」


そうだとしたら、自分がショックなだけでなく、朝から手伝ってくれたみやびちゃんにも申し訳ない。


「全然。
寧ろ今日はいつもより可愛いよ。」


「今日は友達に手伝って貰ったの!」


「友達?」


「うん。
友達が今家出してて家にいるの。」