それから俺達は一言も話さずに改札まで行った。


こういう時は普通俺から話さないといけないと思うのだが、何を話したら良いか見当が付かなかった。


先程まで謝りたかった事だって、このままでは到底口に出来ない。


俺達は改札を通り過ぎた。


せめて別れの挨拶ぐらいはしたい。


そう思ってた矢先の事だった。


「妃奈!」


俺は思わず足を止めた。


男の声がした。


確かにその声は滝沢の名を呼んでいた。


滝沢も動きが止まっているから、俺の聞き間違いではない。


「真幸!?」


滝沢はそう言った。


俺が初めて聞く名前だった。


男はこちらへ駆け寄ってきた。