「妃奈、明日から頑張れよ。」


「うん!」


不景気だの就職氷河期だの言われている今、あたしは高校の教師になりたいと思っていた。


教師になって、好きな英語を教えて、自分より若い高校生と共に“今”を見つめる。


素敵な仕事だと思う。


そんな夢を抱いているあたしは、明日から3週間だけ母校に帰る。


そう、教育実習だ。


「何か大変そうだな、レポートとか書かないといけないんじゃないの?」


「そりゃそうだろうけど、企業に入る為の就活も大変なんじゃない。
そう考えたら…どっちが楽っていうのは無いと思うな。」


「まぁな。
でも大変は大変だろ?
今の時期は皆大変だけどさ…
教育実習っていったら、先生になりたい子にとって一つの関門みたいな感じだろ?
だから頑張れよ。」


そう言ってまたあたしの髪に触れる。


自然と笑みが零れる。


幸せだ。


ずっとこうしていたい。


「真幸、」


「うん?」


「…ずっと一緒にいたい。」


あたしは真幸の腕を柔らかく掴む。


頭にあった手は背中に回された。