「北条先生顔は良いし、授業も上手だし、性格もいいから、その…憧れてる子とか、格好良いって騒いでるファンの子っていっぱいいるんです。
でもあたし、そういう子とは違うんです。
本気で、北条先生が好きなんです。」


馬場さんの言ってる事はよく理解出来る。


あたしが馬場さんと同じ歳の頃、そんな子は多くいた。


人それぞれ形は違うが、一生懸命彼に見て貰おうと努力していた。


「頭では一応理解はしてるつもりなんですよ。
北条先生からしたらあたしなんか全然子供だし、それに先生は皆を平等に見なきゃいけないから、今告ったってフラれるだけですよね。
それに…
何処ぞと散らばってるケータイ小説じゃあるまいし、先生に恋したってそんなに上手くいくはずないし…」


馬場さんは言葉を詰まらせた。


「馬場さん?」


「ごめんなさい。
教育実習の先生に言う事じゃないなぁって思ったんですけど、でも他に相談出来る人いなくって。
滝沢先生なら聞いてくれると思ったから甘えちゃいました。
ごめんなさい。
聞かなかった事にして下さい。」


馬場さんは立ち去ろうとした。


彼女はあたしの真横を通り、校舎の方に進む。


「…気持ち分かるよ!」


突如聞こえた声に、馬場さんは振り返る。


「あたしだって人を好きになった事ある。
それに、あたしが高校生の時も北条先生に恋した友達もいたから、馬場さんが思ってる事、分かるつもりだよ?」


嘘を言ってはいないが、言い切ると同時に後ろめたさが生まれた。


言えない。


自分も北条昴が好きだったなんて。