脳が何か命令を下す。


唇が少しずつ解れていく。


「北条先生…」


もう一度名前を呼んだ。


言えると確信した。


「好きです。
もし、あたしなんかでよければ…その…またお付き合いして下さい。」


言えた。


緊張が氷のように、徐々に溶ける。


だが、まだあたしは動けない。


この人から何も聞いていない。


あたしはおずおずと顔上げる。


北条先生は目を大きくして立っていた。


返事を聞くのがとてつもなく怖くなってきた。


「滝沢…」


北条先生の口が動く。


「昔、滝沢が中学の時も高校の時も、今だって困らせたり傷付けたりしてきたんだぞ。
なのに…また俺と一緒にいてくれるのか。」


「あたしは、北条先生…昴以外の人の傍は合わないみたいです。」