「もし滝沢がいいなら今でもいいぞ。
多分、まだ全員集まらないと思う。
教育実習最後の日の戸田先生のクラスは終わるの遅いから。」


そういえば、そうだった気がする。


一時間以上ホームルームが続いたって、高校生の頃誰かが言っていた。


成長した教え子の姿に感動して、なかなかホームルームが進まない上に、その人との思い出について語り始めたとか。


もしかして、毎回そんな事をやっているのだろうか。


そうだとしたら、里田君はなかなか帰ってこれない。


「じゃあ…今でもいいですか?」


何を慌てているんだ、あたし。


心の準備なんて全く出来てないのに。


そう内心焦りつつ、言ってしまったからには仕方がない。


やっぱり後で、という事をこの人が言うわけない。


「ああ。
でも…あんまり人が来ない所か…」


北条先生は立ち上がった。


「ちょっと待ってて。」


北条先生は職員室の入口付近に行って、すぐ戻ってきた。


「近いけど、ここなら多分大丈夫だろう。」


「確かに、大丈夫そうですけど…」