だからか。


あたしは納得した。


里田君と阿紗子は昨日会った時から、それこそ友達のように話していた。


その理由が分かり、糸が解れたような思いがしたが、解れきらなかったようだ。


本気で好きだった恋人から友達になるなんて本当にあるのだろうか?


片思いなら有り得ると思う。


あたしの場合、常田君とはまだ友達だし。


でもあたし達は付き合うまでいかなかったしな…


またモヤモヤとしたものが膨らむ。


だが、少なくとも今はそんな事聞けない。


「とりあえず、もうちょっと返事待って貰ったら?
この実習が終わるくらいまで。
この実習中にもう一度里田君の事好きになるかもしれないし。
それに、阿紗子に変化がなくても里田君が『やっぱり友達の方がいいな』って思うかもしれないじゃん!」


「やっぱりそれが一番良いよね…」


阿紗子は窓の外に目をやった。


あたしって、人の相談乗るの向いてない?


あたしが二十年と少し生きてた中で初めて気付いた。


よく考えれば、阿紗子はそうしたのだろう。


「ごめん。
あたし、まともな答え言えてないよね。」


「そんな事ないよ。」


阿紗子は正面を向いた。


「自分がすぐに答え出さなくて正解だったって自信持てたから。」


あたし達は二人して窓の外を見た。


阿紗子が何処を見ていたかは分からない。


あたしは上だけを見ていたから。


ここからは、星はおろか月さえも見えない。


明るく見えるのは、この店やその他の建物の明かりのおかげであった。