それは昔懐かしいものである気がした。


あたしがこの人を“昴”と呼び、愛してた頃である。


心臓の動きが急に速く、強くなる。


全身を巡る血が今の自分の状況を教えてくれた。


あたしは爪先程も動かずにいた。


「どういたしまして。
…ちょっとこれコピーしてくる。」


そう言って、北条先生は離れていく。


それでもあたしは少しの間動けないでいた。


一瞬、錯覚してしまった。


きっと昔なら、このままキスしてくれたんだろうなと考えてしまった。


そんな事されるはずないのに、あたしはそう自分を諌めた。


過去は過去、今は今である。


今ここでなんて絶対にありえない。