やっぱり彼奴、滝沢先生が好きってわけじゃなかったんだ。
少しショックのような、でもどこか安心している。
あんなのが滝沢先生好きってなんか嫌だもん。
だからって、傷付いた心は癒えない。
寧ろ割れて散らばらない程度の罅が徐々に入る。
温かさの源が冷気を出して、罅から心を蝕んでいく。
体の中から何かが抜け出す。
大事にしたい想いが、思い出が霞んでいく。
虚偽はあたしに鮮やかな夢を見させたが、真実がそれを咎める。
だけど、そんな簡単に諦めたくない。
諦めたらそこで終わるとか、そんな綺麗事じゃない。
あたしじゃ北条先生の彼女なんて務まらないのも分かってる。
ただ自分の諦めが悪いだけ。
もう少しだけでいい、甘美な夢の続きを。
そう言って、もう少しを繰り返してきた。