アナウンスが流れた。


電車がもうすぐ動き出すそうだ。


アナウンスが消えると、周りの話し声が鼓膜を刺激する。


その中で、あたしの心の中に雑念が生まれた。


北条先生から真幸の名前が出た事で、あたしが真幸の話をする事が出来る。


もしあたしが真幸と別れた事を話したら…そう考えた。


良い方向に行くのではないか。


北条先生に近付くチャンスを掴めるかもしれない。


そう思うと、心が微かに踊りだした。


あたしの一部はとても積極的だった。


だが、同時に戸惑う部分も発生した。


あたしはこんな人間だったのだろうか?


今の自分は、自分が知る己よりも随分と積極的で、かつ計算高い。


急にどうしたのだろうか?


踊り、急ぐ気持ちと、戸惑い、焦る気持ちが鬩ぎ合っていた。


暫くあたしは何も話せないでいた。