辛いよ、思った以上に。


でも


「苦しくない世界はもっと辛い気がするから。」


あたしはやはりこの男がよく分からない。


好意なんて捨ててしまえば、如何に楽になるだろうか。


そんな安楽への招待状を差し出した。


「失恋の巻き添えなんか嫌だよ。」


「それ、被害妄想だよ。」


被害妄想か…


慰め合う相手がほしいのかと思った。


あたしは鞄を持った。


「帰る。」


それだけ言った。


止められる事はなかった。


太陽は傾き始め、近付いてきていた。