小さな嘘をついたつもりだった。


だってあの時はまだ担任でもなんでもなかったじゃない。


一人の先生に嘘を言っても問題ないはずだった。


そりゃあたしだって、既にバレているか否かぐらい判断出来るよ。


ただ認めたくないだけ。


認めたら傍に寄れなくなるもん。


せっかく、せっかく一緒にいられる時間があるんだ。


きっと神様が与えてくれた貴重で夢のような時間。


卒業したらもう二度と見れない幻だろう。


それでもいいの。


悉くフラれるクラスメートを見ていたら、北条先生が教え子と付き合う気がないのだと分かる。


今彼女がいるのか、それとも忘れられない人がいるのか、理由は分からない。


だが、あたしが今告白したとしても勝算は皆無だ。


それなら今想いを告げて気まずい思いを―少なくともあたしが―するのは嫌だ。


もどかしい時もあるが、そこは感情的な理性が抑えつけていた。


じれったさが心労となり、滝沢先生に色々と吐露してしまったが、きっと問題ない。


滝沢先生は信用出来る。