「あたしは…」


あるのだろうか。


考えてみた。


少し間を空け、あたしは言った。


「分からない。
偶然は必然って言うし、必然は偶然とも言うし。」


「そう…ですよね。
足止めしてすいません。」


馬場さんはまた歩き始めた。


階段を登るその姿はやはり危うく見えた。


馬場さんが見えなくなってから気が付いた。


さようなら、と挨拶するのを忘れてしまった。


変わっていない校舎に、変わった二人。


少し歪だったかもしれない。