変わらない日常が退屈だという思いは何処へ消えたのだろうか。 変わらずにあり続けたこの校舎に感謝し始めた。 教育実習で母校に帰る傾向が強い理由の一つはこれかもしれない。 歩みの速度が落ちる。 速く歩いたら、丁寧に感謝出来ないようだ。 あたしは廊下から階段に移る。 やはりここも変わらない。 練習に励む吹奏楽部の楽器の音が聞こえてくる。 全てが懐かしい。 その中に違う音が交じる。 誰かの足音だ。 「馬場さん、」 あたしは声を掛けていた。 下を向いてた馬場さんが顔を上げた。