あの頃のあたしは単純過ぎた。


昴が浮気した事は死んでも許せない。


でもあたしがすべきだったのは、謝りたいと言った彼奴を諌める事ではなかった。


彼奴が妃奈に何も言わなかったのは、殆どあたしのせいなはずだ。


昴を信用しなくても、もっと妃奈を信じるべきだった。


妃奈が現実に直面したら壊れてたかもしれないが、それで終わってしまう子ではない。


それを分かっていたのは、昴ではなくあたしだったじゃないか。


妃奈を傷付け、時を止まらせたのは昴ではない。


あたしと昴だ。


お互い、本当に妃奈を大切にしていたのに、二人で妃奈の人生壊したんだ。


あたしはドアノブを強く握り締めた。


また妃奈の声が聞こえる。


そうだよね。


妃奈には今彼氏いるもんね。