生徒を差別するような人じゃない。


あたしがそう言うと、馬場さんは俯いた。


そしてまた顔を上げた。


先程と打って変わった表情である。


それは明かりが少し暗めの場所に立っているからだろうか。


「…嘘付くような子でも、北条先生は嫌いにならないかな。」


馬場さんは確かにこちらを見ているのに、あたしは彼女が独り言を言っているように思えた。


敬語が崩れたせいもあるが、それだけではない。


馬場さんは、何処か遠くを見ているようだった。


今この場にいない彼を見ているのかもしれない。


「馬場さん?」


返事がない。