「滝沢先生!」


声を聞いただけで分かった。


「どうしたの?」


馬場さんだ。


「今お忙しいですか?」


「大丈夫だよ。
…昨日言ってた事?」


恐る恐るって程ではない。


だけど、不安がそんな聞き方をさせた。


「はい。
でも滝沢先生のご都合が悪ければ…」


「今なら大丈夫よ。」


「ありがとうございます!」


北条昴は現在会議中で、暫くは戻らない。


彼女はその事を知っていて来たに違いない。


あたしは立ち上がる。


きっと他人に聞かれたくない話だろうから。


馬場さんが先に歩いていく。


その背中を眺めながら、あたしは後ろめたさで足を止めそうになった。