そうしていたらあっという間に17時近くになり、あたしは話を中断しなければならなくなった。


「ごめん。
もう行かなくちゃ。」


「そんなの全然。
引き止めてごめんなさい。
今度英語教えて下さいね!
じゃあ、さようなら。」


「さようなら。」


馬場さんが教室を出るのを見送ってから、あたしは早足で第二応接室に向かった。


あたしが着いた時にはもう既に里田君と阿紗子はそこにいて、二人は話していた。


正直入りづらかったが、入るより他に何も出来ないあたしは足を踏み入れたのだ。


そしてあたしが入ると同時に戸田がやって来た。


「今日一日どうだったか?」


どうだったかと聞かれても、授業のやり方よりも内容に魅入っていたあたしは何と答えるべきなのだろうか?


「いやー、戸田先生はやっぱりプロですね。
体育って体を使う授業だから、割と自由な雰囲気があって生徒の私語が増えたりするかなって思いましたが、先生の授業では全然そんなこと無かったですね。
皆言われた事しかせずに、まさに無駄のない授業でした。」


…里田君、これ、用意してきた言葉だな。


戸田の授業を皆が真剣に受けるのは、真面目だからとか戸田が怖いからではない。


そうしなくて後で絡まれるのがウザいからである。


あたしはそう思ったが、戸田は里田君の言葉が真実であると思っているらしい。


ドヤ顔の戸田は次に阿紗子に同じ質問をし、最後にあたしにも聞いてきた。


「里田君と被る所もあるのですが、北条先生凄く授業上手だなって思いました。
久しぶりに北条先生の授業聞いて、いつの間にか授業が終わってしまった感じですね。」


「そうかそうか。
なら全員、今日の分のレポートはしっかり書けるな。」


あたし達はボールペンを出す準備をした。