まだ『先生』と呼ばれるには早いと思うが、彼女にとってはそう呼ぶに値するのか?


少しの疑問と照れが生まれる。


あたしが振り返ると少女がニッコリと笑った。


「初めまして。
馬場希です。」


馬場…


そういえば、さっきの授業で彼が彼女の名前を呼んでいた気がした。


「馬場さんね。
暫くの間宜しくね。」


「こちらこそ。
滝沢先生、これから時間ありますか?」


「5時になったら集まらないといけないんだけど、それまでなら大丈夫だよ。」


「じゃあそれまでお話しましょう!
あたし、滝沢先生と仲良くなりたいんです。」


その一言にあたしは溢れ出すような喜びを感じた。


あたしと親しくしたいと言ってくれる子がいる。


それだけでも、今日からの教育実習に意味があるように思えた。


あたしと馬場さんは最初は普通の会話、例えば好きな音楽や映画の話をした。


途中から話題は英語になった。


話をするといっても、主にあたしが話していた。


というのも、馬場さんは英語が苦手らしく、どうやって勉強したらいいか分からないという。


まだ未熟なあたしは自分の今までやってきた事しか話せなかったけど、彼女は真剣に耳を傾けてくれた。