目の前が霞んでいくようだった。


滝沢には彼氏がいる。


きっと滝沢に相応しい奴だ。


無いとは思うが、今回の事で二人にトラブルがあったらどうしようか。


彼奴の性格を考えると、今日の事を気にしないわけがない。


滝沢に歩くの遅いと言ったが、今日は俺も歩くのが遅いようだ。


後ろからどんどん抜かされていく。


独り取り残されたような気分だ。


駅の明かりが見えた。


電車がもうすぐ発車するのだろうか、小走りする人が多く見られる。


時計さえ見る気にならない俺はまだゆっくりとしか歩かない。


急いで帰る必要もないのだ。


一本遅い電車に乗っても問題ない。


駅が少しずつ俺に近付く。


丁度駅に入ろうとした時だった。


「すいません。」