「滝沢…」


どれだけの間そうされていたかは分からないが、二人の間に距離が出来た。


でも彼はまだ階段を下りる事はしない。


まるで動けないかのように止まっている。


「北条先生?」


明らかにいつもと違う。


あたしは急に恐ろしくなった。


全く知らない表情をしているわけではない。


「あ、あの!」


急に右側の二の腕を握られた。


逃げなきゃ、本能でそう悟った。


でも体は何故か硬直してしまっていて動けない。


「好きだ。」





ハッキリと聞こえた三文字を、脳が処理した。


「嘘…」


自分の口がそう言っていた。