「来てたんだ。 メールくれたらもうちょっと早く来たのに」 いつものヒールの足音が廊下に響いて、病室に笑顔の幸子さんが現れる。 あたし達に向けられる笑顔に感謝しても足りないくらい。 こんな風に向きあって、笑えるようになるなんて思ってなかった。 拉致されるように幸子さんにここに連れてこられた時は、恐怖と不安しかなかった。 幸子さんに聞いた鉄兄の過去は、あたしなんかが知ってはいけないような気がして… 鉄兄の辛さや悲しみに何一つ気付いてあげられてなかった自分が情けなかった。