不意に聞こえたそれは母の仕事から帰った合図。


「おかえり」


僕は、不躾ではあるが部屋から声だけで答える。


いつもならば出迎えるけど、今日は少し勝手が違う。


みーちゃんがいるだけだけど。


「夏樹、誰か来てるの?」


そんな声と同時に部屋のドアが開き、母さんが入ってきた。


事前のノックは無論なしで。


「なんでいきなり入ってくるんだよ」


一応の不満は伝えるが、……母さんは固まっていた。


多分、息子の部屋に見知らぬ女子がいる事に驚いて、固まってるんだろう。


流石に数年振りでは、みーちゃんが誰かわからないよな。


「……もしかして、八幡さんの、南ちゃん?」


母さんがそう言うと、さっきから僅かに俯いていたみーちゃんが顔を上げた。