「どしたの夏君?苦い顔してるけど」


「いや、ちょっとね」


多分「ゲシュタルト崩壊しました」なんて言っても伝わらない。


寧ろ八幡の事だから「崩壊」にだけ食いつきそうだ。


「ふ~ん。へんな夏君だねぇ」


「八幡には言われたくないけどね」


「ダメだよ夏君。二人きりなんだからちゃんと『みーちゃん』って呼ばないと」


「いやいや。高校生にもなってそれはキツいよ」


「なーんーでーよー。『みーちゃん』って呼んでよ夏君」


「……また今度ね」


「じゃあどこか誰の目にも着かないとこで二人になったら呼んでね?」


「まぁ、気が向いたら。ね」


「絶対ね。絶っっっ対!!」


「はいはい絶対絶対」とか適当に流しつつ僅かな街灯が照らす夜道を行く。