「あっ。って夏君。本当に夏君にはデリカシーがないね」
「……いや。その、ごめん」
「だ~め。許さない」
しかし言葉とは裏腹に表情は柔らかい。
学友からは鉄面皮と揶揄される八幡ではあるが、なかなかどうして。
僕の前では昔から表情が安定しない。
けど、僕も安易に説教めいた事を言ってしまった。
要反省。
「でも夏君がどうしても許して欲しい。って言うなら」
「いや別に」
「そうだね。キスしてくれたら許したげる」
清々しいくらいのスルーだ。
しかもキスって。
「つまりは節分」
「豆を撒くシーズンはまだまだ先だから」
今は鬼にとってもシーズンオフなのだからそっとしておいてあげよう。



