私はマスターを見た瞬間に、安心する。
だけど…―――
「ここに人が来てる!!
何も知らない人が…!!」
「うん、知ってるよ?」
え!?
マスター、知ってるの…?
「桜華がたまにここに来て、塔を見てることなんて知ってる。」
「だったらどうして――」
止めさせないの?
「まぁいろいろあるんだよ。」
止めようと思えば止められる、とマスターは続ける。
一体、何を考えてるのよ、マスター?
「最近の月華は人らしくなってきたね。」
「………っ!!!」
…そんなこと………ない……
そうとは言えない。
自分でも、少し思っていた。
最近は感情が内側から溢れてくるのが分かるもの。
「まぁ良い傾向だよ。」
小さく言ったマスターの声は私には聞こえなかった。
「マスター…私、自分を保っていられない。あそこにいたら私は“栗栖侑希”でいられないの…」
「じゃあ、仕事、する?」



