マスターは、あはははと笑い、「お願い!!」と手を合わせてきた。
何をお願いしてるのかなんて分かりきってる。
だから早速窓をあけて、散らかりまくった本を壁にそって並べた。
私が風を使うことによって部屋の中はみるみるうちに片付く。
…まったく。
マスターって意外と子供。
「ありがと。」
そう言いながら私の頬にキスを落とす彼に、「ん」とだけ返した。
コンコンッ
私たちはマスターの自室を出て、仕事部屋のほうにいた。
そこの扉が叩かれる。
「どうぞ。」
マスターが声をかければ、背筋をピンと伸ばした乃亞が入ってきた。
「仕事は終わりました。金は振り込まれてます。」
「ご苦労様だね。」
くるくる回るイスに座り、膝に私を乗せてご機嫌なマスター。
乃亞は何か言いたげだった。
「…月華は、戻さないのですか?」
私はその言葉に驚いて乃亞を見る。
「戻す、って…ここに?」
「はい。学生なんて、何のためにやっているのか分かりません。」
ここまではっきりとマスターに意見出来るのは乃亞くらいか。
乃亞はいつ死んでもいいと思っているからな……



