「おー、楓!どこ行ってたんだよ?」
低くて心地好い声が響く。
ああ、この声…聞いたことがある。
「へへ、陽斗さん!俺、女嫌いなのにコイツだけは平気なんだ!」
照れ臭そうにそう言って、私をふと引っ張る。
「あ…」
小さくよろけてしまった。――けど蓮士の手が伸びてきて、倒れずに済む。
「ん?女か?」
「…はじめまして。」
じ、と見つめられて声が出なくなる。
「……お前、どっかで会ったことねえか?」
う、
分からないと思うけれど…
ごまかすに超したことはないわよね。
「いえ、ないかと思います。」
「そうか、ふーん。」
少し納得いかないようだけど、なんとかなったかしら…?
まあ、大丈夫なはずだし。



