「そういえば、サラと約束したのも、ここだったよな」

ルカがふと呟き、サラは一瞬手を止めて微笑み、再び動かした。

「そうだね。ルカのご両親が病気で亡くなって」

「俺がサラの病気を死んでも治してやるって泣き喚いて」

あの時は必死だった。
悲しくて、恐くて、どうしようもなく恋しくて。
ルカはただひたすらに願った。
治ってほしいと。

「私の病気のこと、真剣に考えてくれたんだよね」

「うん。で、約束したんだよな。……俺がサラを守るって」

ルカがサラの瞳を捕らえて言う。
真っ直ぐに、曇りも偽りもなく。

「そ、そんな約束だった?」

サラは慌てて目線をずらした。
最近、こんなことが多い気がする。

「要約すればそういうことだろ?」

なんか違う気もするけどなぁと思うのに、鼓動が早くて上手く言えない。
うーん、困った。

「サラ?」

俯くサラにルカは心配そうに声をかける。

「はぇ!?あ、ごめんね。はい、剥けたよ」

皮の剥けた桃を早急に手渡し、サラは手で顔を仰いだ。
サラの様子を気にしつつも、ルカは桃の味に目を細めた。
最近、よく目を逸らされる気がする。
俺、サラに何かしたかな…。

高くなっていく太陽の下、鼻をくすぐる桃の匂いに包まれ、穏やかな時間がゆっくりと流れていた。