後ろに腕を縛られたルカはイスをがたがた揺らしながら、机越しに座るひげの生えた役人に言う。

「馬鹿なことを言うな、ませガキ。お前は時刻が来るまでここで反省するんだ。悔恨でもしていろ」

ちっと舌打ちしてルカは役人を密かに睨んだ。
サラと散歩に行こうとした途中、役人に見つかって捕らえられた。
その場にサラを置いてきてしまった。
ルカはそのことに不安を覚えていた。
サラ…。
俺が守ってやるって決めたのに。
こんなところで死んでる場合じゃないんだけどな…。
ごめんな、サラ。
ルカは黙って時が来るのを待った。

外では処刑台が完成間近だった。
サラは自宅に戻るよう役人に言われたが、家には向かわずにドクの家へ走っていた。
ルカ…!ルカ…!
胸のどこかに、こんな日がいつか来るんじゃないかという不安の塊があった。
ルカの嘘は自分のためなのだから罰せられるのなら私だって…。
サラは処刑台を造っている様子を絶望の眼差しで見つめるドクを見つけた。

「村長さん!」

「サラ!ルカはどうした?」

「役の人に捕まっちゃったんです!村長さん、ルカを助けてください!ルカは何も悪くないのに…!」

ドクの胸に手を押し当ててサラは必死に言った。
役人の指示の声と村人の掛け声が響く。

「すまない…。わしにはもう、どうもしてやれんのだ。役所の決定は絶対なのだよ…。すまない」

働く村人たちとドクは同じ表情をしていた。
絶望と、諦めと、悔しさに歪んだ顔。

「そんな…。私のせいで…」

サラもまた、嘆恨にうなだれた。
助けることは出来ないのだろうか。

クシャナ村が朱く染まり始め、処刑台の周りにたいまつが設置されていく。
もうすぐ日が暮れる。