それからどれ位経ったのだろうか。

僕は食べたものを全て嘔吐したので、お腹が空いて、目を覚ました。

『吐いたからな、腹が減ってるんだよなぁ』そんな事を考えていると、外からガサガサと音がした。

驚いて僕はドラム缶の縁から顔を突き出した。

いつもの事なのだが、見つかりたく無ければ、顔を上げなければ良いのに。
僕はいつも何か音がする度に顔を上げてしまう、我ながら寂しいのだなと思う。

まるで誰かを待っているみたいだ。

音の主は野良猫だった。僕の嘔吐物を必死に食べているのだった。
僕はその姿を見ているととても複雑な気持ちになった。

僕が嘔吐を繰り返せばこいつは生きて行けるのだ。
また逆に保健所に持ってゆけば、きっと数ヵ月後にはライオンの餌にになるのだ。
それはすごい権限だ。
僕はテレビで見たことがあるんだ。
今年の日本は自殺者が三万人を超えたのだと、それは交通事故の死者数の二倍なのだと。

世界中では人間が物凄く増えて、間もなく食料難が来るのだと。

僕のゲロを食べる野良猫、死んでゆく日本人、増え続ける人類、ライオンの餌、食糧難、野良猫、ゲロ、なんだか気味が悪くなってきた。
もしも食べる物が無いなら・・・・・・野良猫を食べるか、ライオンを食べるか、人間が食べられるしか無いじゃないか・・・・。

イヤだ!イヤだ!イヤだ!

食べられるなんてイヤだ!
野良猫もライオンもそうなんだ。
同じ気持ちのはずなんだ。
「ごめんよ変なこと考えて」僕は野良猫に謝った。
そして最後に「生きろよ」と言ってみたけれど野良猫は野良猫のままだった。