「前々から相談受けていたんです。先輩との付き合いについて。だから別れた事も」
付き合ってる事は二人の秘密だよと言い出したのは相手の方だ。
だから悩みも苦労もずっと一人で抱えてきた。
でなければ先生との関係が壊れてしまうと思ったから。
なのに先生は私にずっと嘘をついたまま……。
「……酷い人ですよね。先輩の気持ちも知らないでぬけぬけと子供作るなんて」
外をぼんやり眺める晃。
その横顔は何処か険しく誰かを睨んでいるようにも見える。
驚きの事実を知った私は、一気に力が抜け思わずその場にへたり込んでしまった。
「そんな……」
頭の中が真っ白で何も考えられない。
もう終わった事なのに、
こんなにショックを受けるのはまだ相手に未練があるからかもしれない。
ただひたすら先生だけを信じてきて突然の別れを言われた揚げ句、
まさかこんなオチがついていたなんて。
「……先輩」
座り込む私にそっと近づいた晃。
膝を曲げ顔を覗き込むように優しく呟くと、
長い指で切ったばかりの毛先に触れた。
「長い髪より短い方が先輩に合ってますよ」
俯く顔をあげると、目を細め温かい眼差しで私を見つめる晃がいる。
その笑顔に思わず胸が熱くなった。
今までそんな顔……、
一度も見せた事無かったのに。


