「嫌いになれるわけないじゃないですか」
そう言って、晃は私をそのまま強く抱きしめてきた。
胸元に顔を埋めた私は泣きながら話を続ける。
「だって着信拒否した」
「――携帯の設定を間違えてアドレス載ってるの人、全員拒否ってたみたいです。今はちゃんと繋がりますよ」
「メールだって返って来なかった」
「――メール?俺のところには届いてませんよ?それアドレス間違ってるんじゃないですか」
「……」
一で返せば十で返ってくるやり取りについムッとして無言になる私。
「怒らないで下さいよ。俺が先輩を無視するわけないじゃないですか」
顔を見なくても晃が笑ってる姿が目に浮かぶ。
そう思った瞬間、漸く涙が止まった。
「電話もメールをしてくれてたんですね。嬉しい」
私を抱きしめる腕にほんの少しだけ力が入る。
――私を嫌いになったわけじゃないんだ。
それが何より嬉しかった。
「先生の事はもう……!」
私が顔を上げて言い出そうとした瞬間、唇に人差し指を当てられ言葉の動きを止められた。
「みんなお見通しですよ、先輩」
ニッコリ笑って話すその笑顔に私は顔を真っ赤にした。
「先生と会った日の事、電話で聞きましたよ。本人から」
‘ごめんなさいって断られたよ。好きな人がいるからって’
「それって……、俺の事ですよね?」
自信満々に話す晃。
「じゃ、さっき先生の事言ってたのは……」
「わざと名前を出して、先輩の反応見たかっただけです。本心からそんな事思ってませんよ」
「……騙したのね」
拗ねた口ぶりで言うと、晃はすみませんと笑った。
「何か、色々悩んで損した」
私は再び晃の胸元に顔を埋め、小さくため息をついた。


