2、3本欲しかったが、なんとなく1本だけ取って、渡された時のまま浮いている手の平に返した。


「ありがとう」


再度お礼を言った。


「1本て」


また切れるよ、と続くかのように、早瀬君はポソリと言った。


「……」


カチカチカチ。


何故か急いで芯を入れる。


先から程良く出てきた芯を見て、私はすぐに数学の宿題を再開した。




「……カウンターでするんだ。
宿題」


早瀬君が姿勢と顔の向きは読書中のまま、今度は視線だけ私に向けた。


「あ……。
ごめん」


急に言われ、何故か怒られているような気がして、咄嗟に謝った。