折り畳み傘、一応カバンに入っているんだけど、持っていないふりをして楠原の傘に一緒に入る。 ああ。 また嘘をついてしまった。 なかなか彼女の理想の男にはなれない。 パシャパシャと、湿った靴音。 傘を持つ俺の左腕に、たまに触れる楠原の肩。 いちいち緊張しながら俯きがちの彼女。 自分からいろいろ話してくれるようになったけれど、未だに触れるとビクついているから、これでも最小限に抑えているつもり。 でも多分、楠原は分かってないんだろうな。