本当に分かりやすい。 一気に緊張し出した楠原。 ムニ。 なんだか堪らなくなって、楠原の頬をゆるーくつまむ。 「……うぅ」 特に文句も言わずに耐えている。 こっち向いて? 「楠原」 「……」 「今日は少し早めに閉めよ、ここ」 「……」 楠原は俺を見て、声は出さずにつままれたまま頷いた。 高まった体温がじんわり伝わってくる。 指の甲で少し頬を撫でてから、スッと手を離した。 それから図書室を閉めるまで、静かな雨音だけが沈黙を繋いだ。