不思議と涙すら出てこなかった。
自分の家へ戻り、私は彼との思い出の品を処分する為に
一つ一つを袋に詰めていく。
その袋の中に詰まった思い出が蘇る。
最後に携帯電話から彼のメモリを削除する時には、
そのボタンを押す指が震え、
涙が頬を伝っていた。
すべての“初めて”は彼だった…
でも、
あの彼の優しさも、
一緒に過ごした時間も
すべてが嘘だった。
私は彼が作り上げた偽りの世界を漂っていただけ。
私は鏡の中の自分を見つめ、
あの男の最後に見せた背中を思い出し
決心した。
もう男の為に涙なんか流さない。
私は彼を…
男を絶対に許さない。
今度は私が男を嵌(は)めて
私と同じ気持ちを味わわせてやる。


