そして、彼は私に言う。
「佐伯さんの歌も聴きたいな」
まぁ、流れ的には当然そうなるよね…
「実は私、歌うの苦手なんです。
…でも、明智さんの歌も聞かせてもらったので今日は歌っちゃいます」
私が悩む素振りで通信機を検索。
しばらくしてから、小さなため息と共に動かす指を止める。
すると彼はそれを覗き込み
「決まった?」
と尋ねた。
「迷ってしまって…
明智さんはどんな曲が聞きたいですか?」
逆に尋ねて
本日、二度の共同作業。
一緒に曲を選んで送〜信。
両手でマイクを握って
つつましく唄う。
間奏の間に、彼とちょっとおしゃべり。
歌い終え、
マイクを置いたら
「恥ずかしかった〜」
両手で頬を押さえて照れたフリ。
「佐伯さんの歌も良かったよ」
と彼が微笑む。
「そうですか?
ありがとうございます。
明智さんにそんな風に言って貰えて良かったです」
“良かった”か…
つまりは上手ではなかったってことよね。
分かってます。
あぁ、分かってますとも。
だから“苦手”って前フリしたじゃん!!
まぁ、私が使った“素敵”と同じ意味か…


