「それだけ?」 正直、そう思った。 そのときはたまたまあたしが近くに居たからあたしが取っただけ。 あのとき、あたしじゃなくて、彼か、もしくは司書さんがいたら、きっとその人がとってあげてただろう。 「そのあと、男の子の頭撫でながら、微笑んだんだってさ。それが天使みたいだし、本を取ってあげられるやさしい人なんだって思ったらしいよ」 彼もまた、あたしを勘違いしている。