心 [短編]

「――何かあったら言うのよ。」


お母さんは私の手を握り、心配そうな面持ちで話す。


――さっきから変な感じがする。


「――耳…。」


ポツリと呟く私の顔を覗き込む。

私は静かに言葉の続きを吐き出す。



「――左耳、聞こえない…。」