『ん。』
俺は鞄からジャージを出して、夏那に渡した。
「…、」
『いい加減側溝から出れば?』
夏那はゆっくり動いて側溝から出ると、
スカートの下に俺のジャージを履いた。
「修、足長いね…」
『てか男物だし。デカくて当たり前だろ。
ほら、乗れよ』
再び背中を向けると、夏那はまた顔を赤らめ、躊躇した。
「だから、重いからいいって…」
『なんのためにジャージ履かせたんだよ。
ほら』
「きゃっ」
腕を無理やり引っ張って、夏那を自分の背中におぶった。
「ちょっ!修!!」
『お前んちどこ?』
「重いから下ろしてってば!」
いや、重くねーから。
『どこだよ。教えないと置いてくぞ』
「………あそこの看板曲がってまっすぐ…」
『了解』
耳元で夏那に話されて、俺は柄にもなくドキドキした。
夏那の家に到着して、背中からゆっくり夏那を降ろす。
「修、…ありがと」
『おう』
「今度お礼するね」
『別にいいのに』
「そうゆうわけにいかないよっ!
なにがいい?」
『…』
なんでもいいんだ?
『じゃあ、俺と付き合ってよ』
内心ドキドキしながら、でも余裕ぶってさらっと言った。
「ふえ!?」
夏那はさっき以上に顔を真っ赤に染めて、驚いてる。
あぁ、いちいち可愛いなこいつ。
こんなことでそう思うなんて、
俺ってけっこう重症かも。
end

