少しして…
先生はようやく解放してくれた。



「俺がここに呼んだのに、イヤな思いさせて悪かった。けど本当に咲桜ちゃんに遠慮してるとか、顔合わせたくないとか、そんなんじゃないから。だから本当に安心して?」



先生の優しく穏やかな
宥める様な言葉に
あたしは自然と頷いていた。


絶対
呆れてる…


だけど気を使ってるのか
先生の口調は優しいまま。



「医者は時間がバラバラだから、こんなのは多々あるんだ。だけどもう少しで忙しいのも終わる。そしたらちゃんと帰って来られるから」



「はい…」



あたしが頷いたのを確認した先生は、自身の左腕に刺してある点滴の針を抜き、皮膚を消毒した。


そして優しくあたしの肩をポンッと叩き、スッと立ち上がった。



「じゃあ俺は病院に戻るな?」


「こんな時間なのに!?」


「あぁ。まだ仕事が残ってるからな。明後日には終わる」



言いながら先生は
仕事用の鞄を掴んで
部屋を出て行ってしまった。




先生の後ろ姿を見つめ
心配しながらも
抱き締められた事を思い出し
心臓の鼓動は速くなるばかりだった…