咲桜ちゃんのアパートを出発し
もうすぐ病院に到着する。



次の信号で止まった所で起こそうと思っていると、その前に咲桜ちゃんは起きた。



「もしかして…寝ちゃってましたか?」


「あぁ。気持ち良さそうにグッスリとな」



『恥ずかし…』と小声で呟きながら、咲桜ちゃんは窓の外へと顔を背けた。


女の子は
男の隣で寝るとかって
やっぱり恥ずかしいもんらしい。


医者としては
今の咲桜ちゃんは眠れた方がいいから、安心なんだけど。



「もうすぐ病院だから、あと少し待ってろな」



だが咲桜ちゃんの返事が返って来ない。



…なんだ?
具合でも悪いのか?



「どうした?大丈夫か?」


「コホッ…」



小さな咳を耳にしたのも束の間…



「ゴホッ、ゴホッ」



本格的に咳をし始めた。

せっかく治まりかけた発作が
また再発した様だ。



「咲桜ちゃん、落ち着いて吸入器使って」



運転している為
口で指示するしか出来ない。

右手でハンドルを持ち
左手で咲桜ちゃんの背中を擦る。



だけど
彼女は吸入する事も
更に会話も出来ない程に咳が酷かった。