――……速水side *。+†*



酔っ払いをなんとか家まで送り届け、コンビニの駐車場でコーヒー片手に小さな紙を眺めていた。


それは
咲桜ちゃんの現住所のメモ。


まさか財布に入れたまま持ち帰ってきてしまうとは…。


医者として
患者の個人情報を外に持ち出すなんて、あってはいけない事。


絶対の守秘義務(シュヒギム)も
こんなメモ用紙1つで
簡単に破れるんだから怖い。



「…誰も見てないし、内緒って事でいっか」



あくまで独り言。
こんな悪魔の呟き
聞かれたら最後。
医者でいられなくなるかもな。


そんな事を思いながら
メモを再び財布に戻し
車のエンジンを掛けた。



…と、ちょうどその時
鞄に入っている携帯電話の、着信音がバイブと共に鳴り響いた。


確認すると
ディスプレイには咲桜ちゃんの名前が…。


俺はイヤな予感が頭をよぎり
すぐに電話に出た。



「もしもし?咲桜ちゃん?」


『あ…先生?』



電話の向こうから
元気のない咲桜ちゃんの声が聞こえてきた。



「どうした?大丈夫か?」


『はい…。ただちょっと息がしづらい気がして…一応先生に電話しとこうかと…』



やっぱり。
喘息の発作が始まったんだ。