…とは言えず。


『ちょっとした知り合いがね』だと曖昧に答える事しか出来なかった。





***




講義の内容なんて頭に入るはずもなく、大学にいる時間はあっという間。



マンションに帰る足取りは
鉛でも抱えてるのかってくらいに重たい。



「はぁ…」



吐く溜め息も重みを感じる。


帰ったらまた、2人がイチャイチャしてるんじゃないかって想像すると、気が滅入った。




マンションに到着し
そんな事を考えながら
エレベーターが降りてくるのを
ジッと待っていた。


すると
ふと隣に人の気配を感じ
同時に名前を呼ばれた。



「姫宮さん」



聞き覚えのある声。

その声の主の姿を見て
あたしは固まってしまった。



「…白石さん」



満面の笑みを浮かべた先生の元カノ…白石柚花。



なぜ彼女がここにいるのか…。



「こんにちは。ちょっと今いいかしら?」



先生に会いに来た訳ではなく
あたしに用事があるらしい…。



エレベーターから離れ
マンションの隅の一角へと向かった。